エビデンスについて

みなさんが当たり前のように使うエビデンスと言う言葉。
基本的には、「証拠」や「根拠」を意味します。
近頃では一般の会話でも『エビデンスは⁉』と云う言葉が出るほど、日常に浸透しています。
医療におけるエビデンスの言葉の意味とは
『特定の治療法などがどれほど効果的であるかを示すデータや研究結果』のことを指します。
何かとエビデンスを求められることが多くなった御時世ですが…
いつ頃から言われるようになったのでしょうか。みなさんは御存知ですか⁉
「EBM(Evidence-Based Medicine)」=「根拠に基づく医療」という用語や概念は
1990年カナダの研究者のデイビッド・サケットが提唱しゴードン・ガイアットが論文にして以来、世界中に広まりました。
日本で注目され始めたのは2000年頃からと言われています。
大昔から当然の如く存在しているような言葉ですが…
言われ始めたのは、極々最近の出来事なのです…(^^;


『東洋医学や鍼治療は科学的根拠がないから信じられない!!』と鍼灸は否定されることがあります。
ところがどっこい。
みなさんが絶対的な信頼を寄せている病院で行われている医療も、本当は解らないことだらけなのです。
医療の世界は謎だらけです。
なぜ病気になるのか、なぜ病気が治るのか、なぜ薬が効くのか。そのほとんどが謎のままです。
『解った前提』で医療は進められているのです。これが大事です。
例えば、昔の人は科学的根拠を持って『呼吸』をしていたのでしょうか⁉
『酸素』という物質の存在がわからなくても
『息をしなければ死んでしまう!!』と云う事実(現象)は誰でも知っています。
人体の構造や薬効などの作用機序が解らなくても
『この草を食べたら死んでしまう。』『こっちの草を食べたら、お腹の痛みが治まった!!』など
その違いが判っていれば、それはもうすでに充分『医学』です。
『東洋医学は経験的医療』『西洋医学は科学的医療』と言われることが多いですが
医療の発展とは洋の東西を問わず、経験的なモノであったと思います。
そもそも、医学とはそういうものです。



「EBM(Evidence-Based Medicine)」=「根拠に基づく医療」が提唱される前までは医師たちでさえも
『先輩にそう教えられたから』とか『みんながそうやっているから』『昔からそうしているから』
との理由で治療法を選択する、経験主義的な面が少なからずありました。
手術の術式などでも、各々の大學病院や国立や私立の医学部などで教え方にも違いがあったのだと思います。

しかし、そのようなやり方では本当にその治療法が最良の選択だったのか⁉を検証することが困難です。
そこで、EBMの考え方が提唱され急速に広まりました。
現在、医師が治療法を検討する場合、EBMのデータが不可欠となっています。
閉鎖的環境からオープンな環境へ。インターネットの普及などの影響も多いのだと思います。
世界中で共有できる環境が整ったのでしょう。

鍼灸がなぜ効くのか・・・
という問いに、今現時点で明確な答えは出ていません。
ただし、完全ではなくてもこんな時にはこのツボを使うと良い!! という経験的な法則が見つかっています。
それを繰り返して、「○○すると△△が□□となる!!」と治療の効果が少しずつ明らかになっていくのです。
治効機序がわかっていないから、本当に効くか怪しいと!! 言う方がいますが
昔から、医療とはそう云う物なのです。
なぜなら、目の前の患者さんを救うためには、メカニズムの完全解明を待っていたら何もできません。
「学」の完成を待たずして「術」として施しているのです。
『医療』とは『学』の完成を待たずして、事象を基に、常に実践されてきたものだからです。
医学的には『科学的根拠』が無いよりは、あった方が良い訳であって…
『無ければ医療では無い!!』と考えるのはチト早計かも知れませんね(^^;
医学(学問)においては普遍性が重要です。
人それぞれ身体は違うので、個性を受け入れつつ共通する普遍性を見なければなりません。
医療は普遍性(真理)を重んじつつ、患者さんの個性とのバランスを取ることがとても大切だと考えます。
まとめると
『エビデンスは絶対では無く、無いよりはあった方が良い。』
『医療の世界は解明されてない事の方が多い。』
『エビデンスが無いから医療では無い‼ワケでは無い。』
『メカニズムの解明も大切だが、現在知り得ている事で最善を尽くす』
と云うことでしょうか。

鍼治療のメカニズムは現在徐々に科学的な検証がされてきている分野です。
鍼治療を含め東洋医学が2000年以上も前から現在でも続いていると云うコトは
『一定の効果があるから』だと思います。
一定の効果があると云うコトは事実であり、先人たちの探求の賜物です。
現時点において、鍼の治療効果によるEvidenceの解明が進んでいないだけであって
効果が無ければ、とっくに消え去って歴史の中で淘汰されてしまっていた事でしょう。
鍼を含めた東洋医学は昨今話題の『SDGs(持続可能性のある医療)』であることの証明でもあります。
鍼の科学的な解明(医学)は、研究の専門家にお任せするとして…(^^;
市井の臨床鍼灸師としましては
先哲たちが探求し長年にわたり連綿と受け継がれている東洋医学や鍼治療の叡智を 更に練り上げて(医術)
日々の鍼療で起きる小さな奇跡や感動を症例として、その効果(結果)を黙々と積み上げて行くのみです。
鍼の科学的な解明が成されるその日まで…。
