エスメラルダ・ブリーサ

常在鍼灸

~日常生活の延長に鍼灸を~

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『喫茶去』考。

みなさんは、『喫茶去』という言葉をご存知ですか⁉
禅の言葉で『まぁ、お茶でも飲んで行きなさい。』と云う意味だそうです。
『喫茶去』には短いお話があります。

何故この話をするかというと、同業の仲間の話で『患者さんの公平性』の話題が出たからです。
(ラーメンの食べ歩きが好きでたまに行くのですが、先日某ラーメン店で感じることがあり、まさにドンピシャなタイミングで『公平性』の話が出たのでした。)


『喫茶去』
のお話です。 
登場人物は 以前お寺に来たことがある僧、初めて来た僧、院主、趙州禅師の4人です。

『趙州録』『碧巌録』『五灯会元』

師問新到    曾到此間麼  
日曾到     師日喫茶去  
又僧問     僧日不曾到   
師日喫茶去          
後院主問日          
爲甚麼曾到也云喫茶去    不曾到也云喫茶去      
師召院主主應喏
師日喫茶去          

趙州禅師がやって来た僧に尋ねた。 『以前ここに来たことはありますか?』と。
その僧は『あります。』と答えた。趙州禅師は『お茶でも飲んで行ってください』と。
別の僧に『以前来たことがありますか?』と尋ねた。『来たことはありません。』と答えた。 
趙州禅師は『お茶でも飲んで行ってください』と。
そのやり取りを見ていた院主が、趙州禅師にお尋ねになった。
以前来たことがある人に『お茶でも飲んで行ってください』とお答えになり
初めての人にも『お茶でも飲んで行ってください』と答えたのは何故ですか?
『院主さん?』と趙州禅師が呼び掛けて、院主が呼び掛けに応じる。
趙州禅師が『院主さん(も⁉)、あちらでお茶でも飲んで行ってください。』と。

と云う内容のお話でした。
みなさんはどのように感じられましたか?

中国茶

解釈の中で
『お茶を飲んで出直してこい!!』とか
『お茶でも飲んで行ってください。』と優しい言葉掛けだが、これを言われたら恐々として早々に立ち去るべし。とか
『修業が足りない』と遠回しに言われている。などの解釈も見かけますが…

『去』の字についても
『去れ!!』とか『出直して来い!!』など、その字の解釈に迷われている方も多い印象です。
単に、『今はこの部屋!?で院主さんとお話しているから、ここではなく別の場所でお茶を飲んで行ってください。』
一旦ここを退席して、客間でお茶を飲んで行ってください。』くらいの意味ではないかと思いました。

厳しいものではなく、趙州禅師のやさしさのある言葉だと思います。
自分なりの解釈としましては
趙州禅師は《人によって対応(態度)を変えてはいけませんょ。》とおっしゃられているように感じました。

1番ビックリしたのは院主さんかも知れません!!
何度か来た僧よりも、初めて来た僧よりも、自分(院主)の方が趙州禅師と何度も会っていて
他の人よりも趙州禅師と知り合い(仲良し)であると云う自負が少なからずあったと思います。
それでも。それなのに。他の人と同じ扱いを受けるなんて…
よもやそのようになるとは、思いもしなかったことでしょう。
(仮に、修業が足りない話だとしたら、いちばん院主さんの修業が足りていませんね…(^^;  )

仏教や禅の教えでは人と人が相対した時に、邪念が生まれるそうです。
損得勘定、肩書、貴賤富貴、マウンティング、相手にあって自分にないもの、自分にあって相手にないもの…等々。

『喫茶去』の趙州禅師の教えは
『初めて会う人も、何回か会ったことがある人も、親交のある人も、同様に接しましょう。』
と云うことだと感じました。

青磁器



バーテンダーの葛原 隆一さんは、接客する時の心構えとして
『喫茶去とは、誰に対しても恐れず構えず無心で接する。これが人が人に対してできる究極のサービスだと考えています。』とおっしゃられていました。

患者さんと日々接する仕事をしている身としましても、葛原さんのお言葉を肝に銘じております。

件(くだん)のラーメン屋さん。
周囲には初来店の方も大勢いる中で、分かるような形で常連さんらしき人を特別扱いされていました。
(ラーメン屋さんのご主人の気持ちも理解からなくないのですが…。)

大好きな『毎日食べても飽きない(であろう、知らんけど(^^;  )ラーメン屋さん』は、いつ行っても誰が行っても
特別扱いされている人を見かけません。敢えてそのようにしているのか偶然なのか、システム上!?特別扱いできないように見受けられます。
(だから美味しくて流行っているのか?)

『喫茶去』のお話(院主さんの話の件(くだり))は
受け入れる側だけの話ではなく、客として先様に伺う時の『戒め』の話でもあると思います。
『常連であっても、初めてお店に行ったように控えめに。慣れ過ぎず、照れ過ぎず程よい距離感で。』
と云う『戒め』も含まれていると感じました。深いですね。

『患者さんの公平性』の話ですが
『患者さんからキャンセル料をいただくか?いただかないか?』と云う話でした。
『キャンセル料をいただくのはペナルティとしてではなく、約束を守っていただいている患者さんに対して不公平を感じさせないため。』との思いからの考えだそうです。

人間なら誰しも、『特別扱いして欲しい』と思います。
特別扱いされなかった時、それを見た時、何も損をしていないのに、何か損した気分になります。
特別扱いの裏に潜むリスクというものはあると思います。みなさんはどのように考えますか?

特別扱いしているのを見かけたとき。常連さんがアピールしているのを見かけたとき。
いつもこの『喫茶去』の話を思い出します。
『喫茶去』のお話を通じて、人と相対した時の『公平性』について考えてみました。

公開: 2025年07月11日 14:33

この記事を書いた人
Harry

Harry

鍼灸師/アロマテラピーインストラクター 鍼灸師の仕事とは『病気と戦う』のではなく『身体と心を調律して生命力を賦活させること』にあります。 何かとタイパや効率や即効性を求めるご時世だからこそ、鍼と云うSLOWな医療で身も心も整えてみませんか。